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やきとりコラム  
みんなのやきとりエッセイ
究極の鶏の旨い旨い食い方
■柴田遼壱
やきとりパーティーの後で
 数日前の焼鳥パーティーの素材が冷蔵庫に少しずつ残っていた。今晩は家人がいないので一人きりの夕餉だ。胸肉、砂ずり、セセリ、ぼんじり、レバー、ハツがあるから全部合わせれば今晩のおかずにはなる。
 フライパンにほんの少量のサラダ油を入れ、唐辛子を半分位辛味として油に転がす。熱が入ったらそれらの肉を一緒にいれサッと炒める。肉のいい香りがプーンと立ち上る。そこにお酒を少々。昨夜の残りの剣菱の燗冷まし。じゅっとさせて水分が残らぬ程に入れる。そして塩、胡椒を適当に。さあいい塩梅だ。油を切りながら肉を皿に移す。フライパンにもう少し先ほどの酒をたし、醤油に味醂を加える。煮立ったらさっとコンロからはずして最後にバターを少量溶かす。いいねえ、いい香りだ。今日は誰もいないから味付けも好きに作れる。そのソースを肉には直接かけずに皿の四方に散らして、適時肉の味に合わせて付けようという魂胆だ。やきとりっぽいけどやきとりではない。あくまであっさり鶏の風味を残したいと思った。
 後は庭から摘んできたチシャと新玉葱のスライスにカボスとすりごまと醤油をかけたサラダで十分だ。

うめえ!これは!すごい!
 残り物のそそくさとした夕飯だと思っていたが、いざ口にするとこれがスゴイ!なんという味だ!鶏のいろいろな部位をまとめて食うとはこんなに旨いものか!あらゆる部位の旨味が渾然一体となって味わえる。どうして今までやらなかったのか?チキンカツにしろ、唐揚げにしろ、鶏料理はひとつの部位をどう調理するかであった。これは間違っているとさえいいたくなるのだ。

まるごと食うが正しい
 そうこれが正しい食べ方である。全ての食物は丸ごと食う。これだ。魚でもそうじゃあないか。カワハギに肝がなければ猫に食わせる。秋刀魚の苦い腸がなければ秋を感じない。野菜でも大根に葉っぱがつけば一緒に床漬けにする。クジラなんてのは全部解体して腑分けして大事に大事に日本人は食ってきたんだからね。まるごと食うとは当たり前の食生活なのである。肉だってそうだ。そのはずだ。残念なことにそのような食肉文化がないだけだ。 でも鶏だけは例外だった。一羽丸ごと食ってきた歴史はあるのだ。ただ、近代化の歴史の中で部位に分けて供されるようになった。唯一やきとりとしてその伝統は残されたといっても過言ではない。そう鶏スキもあるか。
 しかし、やきとりは微妙だ。まるごと食うけど一度にではない。少し残念である。全ての部位から旨味が溶け出し絡み合うこの旨さがねえ。いや、それがタレ壺に貯まっているのか。そうだね、ぎりぎり生きてるね。でも一度はこの食べ方をお薦めする。料理の腕は関係ない。まるごと炒めるだけでいいのだから。味付けも塩胡椒だけでも醤油だけでもいいはずだ。

まるごとやきとりみっけ
 鶏丸ごと食うマイブームを友人たちに喧伝してると、福岡のタウン誌に一本の串にたくさんの部位を刺して焼いて食わせるところが載っていますよと情報が来た。早速探すとあったあった。いるんだねえ、同じこと感じた奴が。うれしいよ、いつか是非とも表敬訪問して食わねば。
記事には各部位の焼き加減や塩加減を微妙に変えると書いてあった。まあプロだからそれくらいするよな。でもさっと焼くだけで十分旨いと僕は知っているんだけどね。

(2005/06/13)

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