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やきとりコラム
第3話 ヤキトリと質屋=ロックと革ジャン
その1
時は昔、1980年前後の話である。当時、九州の雄「NEW DOBB」は、九州各地の大学祭やイベントで、忙しい毎日を送っていた。「ロックは反体制でなければならない」。そんな若さゆえか、大いなる使命感のおかげか、"東京"という巨大な権力に立ち向かうべくオレ達は、とにかく拳を振りかざしてステージを飛び回る事に全てを注いでいた。
知名度も金もない。あるのは、まさに反骨精神だけである。自分たちで、ブッキングをしては東京・名古屋・大阪・広島と、ツアーを決行した。ライブが終われば、もちろん打ち上げ。ちょうど大学で散らばった全国各地の友人たちの、四畳半一間、水道・トイレ共同の部屋(当時の大学生はみんなこんな生活だった)に、体を小さくして寝た。そして翌日はまた、車での移動である。こんな地獄のツアーも…今考えると夢のような日々と時間。青春に乾杯である。そこではエコーズの辻人成や、S-KEN、遠藤ミチロウらパンク連中など、たくさんの友達も出来た。そしてそんなツアーの中で、お世話になった数多くの友だちの中でも、特に印象的な人物がいる。
東京でのライブを終え、そいつの家に転がり込んだ。すると、ヤツは「ヤキトリをごちそうしよう」と言って、革ジャンとビデオデッキを段ボール箱に詰め込み、慣れた様子でのれんをくぐる。そこは、「質屋」(若い人にはわかるかな?)なのである。買いトリ♪ではなくて、本来質屋とは、商品(シチグサ)を担保にお金を貸してくれるトコロなのだ。主人とは当然顔なじみで、すぐに出された1万円札を握りしめ、焼鳥屋に連れて行ってくれるのである。(この場合買トリ♪ではなくて、ヤキトリ♪という事になる…。)滅多に食えないごちそう。しかも、自分の大切な物を抵当に入れてまでごちそうしてくれた行為は、オレは一生忘れないだろう。次の給料日に、ナフタリンくさい革ジャンと、ビデオデッキを取りに行くヤツの姿が目に浮かんだ。
その2
さて、ヤツの連れて行ってくれるやきとり屋なのだが、これが半端なくうまい店だった事が、このエピソードに華を添えることとなる。渋谷でのライブ後は、東横のれん街にあるホッピーの看板が大きくぶらさがった店。レバーのタレが絶品もの。昔の新宿ロフトのライブ後には、西部新宿駅手前しょん○ん横丁の壊れかけた店、ししゃもだの銀杏だの…うますぎる!
中野のブロードウェイ通りはなんといってもトリ刺。いやいや涎が出てきます。
そして最も印象的だったのは、吉祥寺。昭和レトロ風情満載のい○屋。けむりが目にしみる♪くらいの臭覚攻めは、どこのウナギ屋さんにも負けない迫力なのだ。そして、そんな東京の焼鳥名店へ初めて行った時にカルチャー・ショックを受けたのだ…。
「大将!バラ3本」 「………」
「キモ3本」 「………」
「ツクネ3本」 「………」
何を頼んでも返答なし。
困りきったオレを見て、友人はニヤニヤしてこう言った。「九州と東京はヤキトリの呼び名が違うんよ」
ガーン。
【東京】
【九州】
「レバー」
「キモ」
「砂肝」
「砂ずり」
などである。いやはや、日本も広いというか、所変われば文化も違うと言うか、困ったもんである。
ちなみに東京というところは、当時うどんもラーメンも、ほんとおいしくなかった。刺身も、新鮮さがなく、乾いてよれよれだったのを憶えている。なんせツアー中、食の一番の記憶は、国道2号線、広島あたりのドライブイン。当時見た事もなかったカップヌードルの自販機くらい。ホント、九州に生まれてよかった、よかった。その時初めて故郷を意識した記憶がある。
最後に、その友人は現在、誰もが知るバンドをかかえる事務所の社長をしている。ウーム、やはり神様は、みていたんだなあ…。
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