まず「焼く」とは「食品に熱をあたえるために水や油のなどの媒体を使わず、直接約200度以上の温度を使う」ことです。
食品にこの温度を与えるとたんぱく質が凝固し、水分をしみ出させ柔らかくなります。また、糖質が焦げ、香ばしさなどの旨みを出します。
ちなみに、内部温度は動物性食品で75度〜90度、植物性食品で105度〜110度程度がよく、その時表面温度はいずれの食品も250度程度、水気の多い食品では約300度で長時間加熱すると良いようです。
一般的な調理方法である「煮る」・「蒸す」・「揚げる」などと比較すると、「煮る」は約100度、「蒸す」は約150度、「揚げる」は約200度に対し、「焼く」では、200度以上と高温加熱のため、食品の表面と内部の温度差が著しく、逆にこの差がおいしさを作り出す秘密となっています。
電子レンジが「焼く」ではないのも、この表面温度と内部温度の差が出にくいためです。ただし内部を適温まで上昇させ、直火焼きなどで表面温度を上げれば、焼きもの器として役立てられます。
では、温度差を作り出すにはどのようにすればよいでしょうか?
日本では「火元から離す」、「塩を振る」、「味噌や醤油を塗って熱を柔らげる」、「砂糖液を塗る」、「金属板で包む」「水分を含む紙や植物の葉で包む」等様々な方法が用いられています。しかし、大きく分けると直接火にかける「直火焼」と鉄板やアルミ箔などを使用して加熱する「間接焼」の2つとなります。
「焼き」は持ち味を生かす調理方法であり、火加減が難しいでしょう。
動物性のものは内部温度が75度〜80度止まりになる時が焼き上がった状態です。表面温度は200度〜300度に加熱するため、焦げ目がつき、自然の調味料がつけられますが、この焦げ目だけで焼きが完了したとはいえないでしょう。温度計を内部に刺して温度を調べたり、内部を割って目で煮えた状態かを判断する必要があります。
この内部が煮える状態にするには、火加減は<強火の遠火>で炎を立てないことが大切で、炭火だと心配なく焼けますが、ガスは炎が立つので表面が焦げて内部が煮えないことがよくあります。それで、この炎をさえぎって炎の熱を輻射熱に変えることが大切で、ガスの炎の上に穴の開いた鉄板を二重にしたり、アスベストの網を置いてこれに熱を吸収させて、輻射熱に変えるなどの焼き方をするとよいでしょう。急ぐために炎を食品に直接あてることは焼の一番まずい手法です。
直接焼きは熱源の火力を輻射熱にかえたものに対流熱を加えた焼き方ですが、一定の火力を続けてあたえる工夫に間接焼があります。
間接焼きの際、中間体としてホウロウ、鉄板、小石、砂、陶土、塩などがあります。この場合は中間体を200〜250度に熱することと中間体の熱を含める量の多いものほど安定するので、鉄板などは厚手のものほどよいでしょう。小石や砂、塩などは300度近くになり、再び熱を放出するので、ゆっくりした過熱として焦げずに中心まで煮えあがるのです。
石焼き芋のおいしさは、この原理を利用した最大の火加減といえるでしょう。
焼き鳥、魚の照り焼き等のタレを塗って、きれいに仕上げるコツは、まず素焼きから始めます。素焼きは、表面を焦がさないようにして火を通します。火が通ったことを確かめたら、タレを塗りますが、タレは塗るというより、タレの槽に突っ込んで引き上げる自然塗りがよいでしょう。 タレは、火の上でこぼれ落ちないように、うすく切ることもコツの一つ。塗って火にあてることを、3〜4回繰り返します。タレを決して焦がさぬ事もコツの一つで、焦がすとタレの中のアミノ酸が、いやな臭を出すので、火加減に気をつけることが大切です。
ステーキは、安い肉でも美味しく焼き上げられます。そのコツは厚く切ること。肉が厚いと表面は熱で縮んでも、熱がゆっくりと内に伝わっていきます。そのために内部は柔いステーキに仕上げられ、肉の味が残ります。
焼く直前に塩やコショウを振るのも美味しいステーキ作りのコツです。直前の塩は肉の表面をしまらせて内部の味を流し出さないためですが、振って時間がたつと塩が肉の中心まで侵みこんで、堅い肉になってしまいます。焼き方は、網の上にのせ、火から20cm以上離した強火の遠火がよいでしょう。
火に近いと、表面の水分が飛んでカリカりになってしまいます。
肉を焼く際には、短時間で表面をあまり焦がさず、もうまみを保つことが重要です。特に肉が大きければ、中心部に熱が伝わりにくいからです。そこで、熱の伝わりやすい鉄製で太目の串を刺して焼くと良いでしょう。 串は肉を支持する役目と共に熱を肉の内部に伝え加熱する作用をしているのです。鉄板焼きなどで使用する串焼きも内部から加熱するために用いられています。一般的に平たく厚手のもので付着した焼きかすを取り除き、磨いたものを使用するのもコツです。
魚焼きにも串が使われていますが、これは姿形を美しく保つことを目的にしたもので、金属だけでなく竹製の串も使用しています。 焼きあがった魚は、水分の水蒸気化や脂肪が溶けるなどして柔らかくなっており、すぐに串を抜くと形が崩れてしまう恐れがあります。そのため、串を抜くのは冷めてからが良いでしょう。また、魚のたんぱく質は冷めるに従い、串にくっつくことから、暖かい間に、串を回しておくときれいに抜けます。
焼き鳥に使用する串は、やきとり屋や市販されているものを見る限り、金属製のものに比べ、竹などの木製が圧倒的に多いようです。このことから、肉焼きの串のように、内部に熱を伝えるためにさされたものでなく、形を保つために使用された「魚焼き」の方式を採用したものと考えられます。 また、調理する際の利便性の面で、串が役立っているのではないでしょうか。なぜなら串に刺さっていなければ、材料がまとまらず直火焼きが大変難しい。その上、様々な種類の食品を味が混ざることなく一度に焼くことができなくなるからです。 このほか、食べる際にも箸を使用せずに気軽に食べられる利点もあります。なんといっても箸やフォーク、ナイフ、器などの食器を使用する通常の食事に比べ、串に刺さった肉を食すという野趣溢れる行為が、遊び心があり楽しいものではないでしょうか?