やきとりの基礎知識 タレについて
秘伝のしくみ 1.やきとりの「タレ」を考える
その前にちょっと二つ
 作る前に二つ大事なことがあります。それは醤油と乳化という作用について。この二つのことについてです。

一番大事なのは醤油なのだ!
 鶏肉の旨味はイノシン酸。醤油の旨味の主力グルタミン酸はその<イノシン酸>と相乗的に働きいて深い旨味を出します。さらに醤油が加熱されると砂糖や味醂の糖分と反応して(アミノカルボニル反応)メラノイジンという芳香物質が発生して、鶏肉そしてその内臓などの臭みを消し、食欲をそそる風味を加味するというわけです。
 つまりタレ作りには醤油はまずどんなことがあっても欠かせない素材なのであります。

乳化という秘法
 よく老舗のやきとり屋さんのタレは大事で継ぎ足しながら、寝かせながら、そしてこれは秘伝ですってね。
鶏をタレに浸けることでタレ壺に残る旨味の秘密は<乳化>という作用なんですね。秘伝の中で重要なのはこれです。
乳化とは
<乳化剤などを仲立ちにして、水または油が細かい粒子になって相手方のなかに分散した状態のことです>


1,水に油が溶けている状態…例、マヨネーズ
2,油に水が溶けている状態…例、バター

 スパゲティを作る時よくプロが最後に茹で汁を入れ混ぜ込みますね、あれは乳化させているのです、すると味がまろやかになるのです。
 さて、やきとりを付け焼きすることで、鶏肉の脂が入り、醤油のアミノ酸と鶏の水に溶けやすいタンパク質などが混入して乳化剤の役割を果たして乳化が促進されます。
 さらにタレの糖分も乳化作用の安定に貢献してくれます。ただタレの液体に鶏の脂肪が混入するだけでは油は酸化して悪臭を発します。でも乳化すると直接空気に触れないので酸化が怒りにくい。さらに乳化は塩味に丸みを持たせるからタレの味がマイルドになるのです。やきとり屋さんは毎日の業務の中で、やきとりをつけたり、タレを足したり、それを混ぜたりと無意識の中で乳化の作業を行っているのですね。

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