烏骨鶏は中国で古来(1500年以上前)から漢方薬として朝廷の薬膳料理、美容食の食材として使用されてきました。薬効は中国本草学の書物「本草細目」によって江戸初期に日本に伝わりました。日本では昭和17年に天然記念物に指定されています。しかし「特別指定」ではないので、食用として食べてももちろん問題はありません。原産はインドや中国、ベトナムなどいろいろな説はありますが、どれも確かなものではありません。烏骨鶏の歴史は神秘に包まれた、奇跡の鶏といえます。
烏骨鶏の羽毛は白く絹糸状の毛で覆われており、脚にもこれが覆われているので別名を"絹糸鶏"ともいい、英名では"シルキー(SILKY)"と呼ばれています。さらに普通の鶏は、足の指が4本ですが、烏骨鶏は5〜6本あります。また飼育日数は倍以上なのに体格は普通の鶏よりも一回り小さく、ルックス的にはとても可愛い鶏です。可愛い子ほど手がかかる!という鶏です。外見上も普通の鶏とは異なり、頭頂(頭の上)に羽冠と呼ばれる、羽でできた花びらのような形の冠を持っています。
さらにもう一つの特徴は皮膚だけでなく、骨、肉、内臓、さらには卵巣、睾丸にいたるまで紫黒色していることです。この黒さの原因はメラニンにあります。女性の方ならメラニンと聞くと「シミ、ソバカス、お肌の大敵!」というように、一般的にメラニンは皮膚の色を決定する色素で、マイナスのイメージがありますが、紫外線を吸収、散乱させる働きを持っています。紫外線の影響を防ぐために皮膚の内部でメラニンが増加した状態が日焼けで、メラニン色素は身体に非常に有効に機能してくれるものなのです。烏骨鶏は身体の大部分にメラニン色素を持っているため、黒い身体をしているのです。
そして、烏骨鶏の肉はしまっていて脂肪が少ないので蛋白です。その身はコラーゲンを多く含みビタミンA、鉄分、DHAが豊富で皮下脂肪はほとんどありません。現代人が補給しにくい栄養素をたっぷりともっているのが烏骨鶏です。特に女性には"ヘルシー"という視点で、注目を浴びている鶏です。
普通の鶏肉は豚肉や牛肉と同様に酸性食品の部類に属します。烏骨鶏も肉だから、もちろん酸性食品と思いきや、驚くべきことに"アルカリ性食品"なのです。烏骨鶏は同じ鶏でありながら、海草類や緑黄色野菜と同じアルカリ性食品に属します。
酸性の食品は脂肪やコレステロールの多いドロッとした血液をつくるため、過剰に摂取すると心臓病や糖尿病などの原因になってしまいますが、アルカリ性食品である烏骨鶏は科学的に血液中のコレステロールを取り除くリノール酸、EPAやDHA、レシチンが含まれています。そのため、血行を良くし、悪玉コレステロールを除去するので、疲労回復、免疫力向上などに効果的と考えられています。
中国の漢方医学書では古来より肉・骨・内臓・卵にいたるすべてをまるごと用いる漢方薬が滋養強壮、不妊症などに良いとされていますが、日本では薬事法の関係上、明言こそ出来ませんが、血行を良くし、免疫力、自然治癒力を高める作用に優れていることから、糖尿病や肝臓病、高血圧、脳卒中、神経痛などの成人病に効能があるということが多くの人に知られています。
烏骨鶏は貴重な鶏といえるでしょう。本場中国でも年間の産卵数が非常に少ない上、繁殖力も弱く大量飼育は難しいとされてきました。しかし、近年、ようやく安定した生産者の確保により、烏骨鶏が日本の食卓、飲食店でも頂けるようになりました。